いま現在も、福島第一原発や除染現場で、多くの労働者はまさに体を張って必死の作業を行っているが、これら現場労働者の賃金は日当1万円代が当たり前で、その賃金は驚くほど安く、また健康に対する配慮はまともにされていないのが実態だ。
それは東京電力側からは1日10万円ともいわれる賃金が支払われても、現場作業員との間に、元請けのゼネコンなどだけでなく、数多くの下請け会社が入り、そのほとんどを中間搾取してしまうためだ。
だが、東電は契約をしている元請けより先のことは知らないとして逃げて来た。
中間搾取企業のなかには、反社も少なからず絡んでいるし、現場作業員のなかにも反社はいるが、これも元請けより先は知らないという理由で、東電は逃げて来た。
現場の作業員のなかには借金漬けなど訳ありの者も少なくなく、またそうでもなければ従事する者は多くない。東電側は、現場作業員を集めるために反社関係者の手を借りないわけにいかず、両者の密接な関係を隠すためにも、多層的な中間搾取構造は好都合なのだ。
こうした、相変わらず現場作業員にとっては最悪の実態のなか、実に注目すべき動きが出て来た。
誰でも即、入会できる労働組合が、福島第一原発事故後、現場作業に従事した者に同組合に入ってもらい、東電に対し、中間搾取された不当な賃金分を支払え、将来起こり得る被曝による健康被害を補償しろ、などと要求し、団体交渉を申し入れたからだ。
以前なら、こうした要求をしても、東電は前述の「元請けから先のことは知らない」ですっとぼけられたかも知れない。
だが、この組合は、昨年末報じられた、厚生労働省が不正な多重搾取構造が存在し、そのなかで作業員の安全が脅かされていることを始めて実質、認めたこと(上写真=『朝日』12年12月9日記事)を根拠に、要求を突きつけている(冒頭写真=その「団交申入書」)。役所が曲がりなりにも認めたとあっては、東電もこれまで同様の対応はできないのではないか。