この間、すでに東日本大震災に端を発する原発関連本はかなり出ている。だが、本書のような切り口のものはないと断言できる。 それはそうだろう。福島第一原発に“潜入”したマスコミ人はボク1人で、その手口が詳細に書かれているのだから。 もっとも、「それがどうした!?」と思われるかも知れない。確かに、潜入の手口を知ったところで何か実益があるとは思われない。だが、注釈などを多く入れることで、通読すると、「原発の本当の姿」について知識が身につくという作りになっている。それに、ボクは原発の対テロの脆弱性を証明するためには作業員としてではなく、あえて潜入する必要があった。 さらに、本書のもう一つの大きな特徴は、紙面の約4割は原発で働く人の生の声を入れている点で、これも他の原発関連本ではあり得ない。 ボクが原発作業員の声にこだわったのは、原発は事故の時だけでなく、日常的に作業員の被曝の上に成り立っている現実があるからだ。 今回の福島第一原発の事故を契機に、原発の是非が問われている。反対派の最大の理由は、事故が起きた時のリスクの大きさに尽きる。だが、それ以前に、作業員の日々の被曝なしで成り立たないようなものを稼働させていいのか!? エラソーに能書き垂れたり、この間の自衛隊や警察などの活動を英雄視するような(公務員なのだから当然)他のマスコミ関係者のものとはワケが違い、必ずや何らか得るところがあると自負している。 実に40年近くも前から原発被爆者の取材をしている写真家・樋口健二氏へのインタビューも掲載している。また、佐高信氏に本書を推薦してもらった。(1300円)…