■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週末の日経平均株価の終値は21,627円と、週間で+176円高となった。ただ、平和だったのはここまでーー。金曜日の夜の日経平均先物は、ドイツの製造業PMI指数が44.7とコンセンサスの48を大きく下回って発表されると、世界景気の後退懸念が蔓延し、21,198円と-429円の大幅安で引けている。そして米債券市場では10年債金利が、3ヵ月物を下回るという長短逆転すぎる(逆イールド)発生と、不況入りのわかりやすい号砲が鳴り響いた。
そんななかでも一番、心配していた為替レート(ドル円)が、もみ合いながら、ようやく突き破った110円台を一気に下回る109.910円となった。為替に関しては、もともと円安基調なのが違和感を覚えるほどだったために1月3日の大暴落時につけた104円台まで悪化しそうな悪寒が走るほどだ。
よって普通に考えるなら今週は保有している資産で、含み損が軽い銘柄は、月曜日の寄り付きで半分ブン投げるのがセオリーで、出来た資金でリスクヘッジ商品の購入を考えるのが生き残りのための常とう手段といえよう。日米株式市場ともに、高値圏からの1回目の暴落であり、ここで逃げることができれば軽症ですむからだ。そしてもちろん翌日の国内配当権利付き最終売買日の26日(火)中に、権利は取らないで、残った半分を投げるべきだと感じる。そう思わせるほどに、金曜夜の米国株価指数の崩れ方はヒドイものだった。そして恐ろしいことに、海外勢の先物ポジションは、今年に入ってかなり積みあがっており、これらを処分する流れになれもするなら、また昨年末の阿鼻叫喚の再現となるだろう。
と、本稿執筆前は考えていた。しかし冷静に相場を振り返ってみると、そこまで不安視する内容なのかわからなくなった。先週金曜日の米国市場は、寄り付き天井で崩れだしたにもかかわらず386,508,044株と、そこまでの大商いになっていない。ようするに恐怖に駆られて、投げ売りした、というわけではなさそうだ。(下写真=NYダウ)
これに比べて、金曜日の夜間取引での日本の先物取引は、かなり商いを伴いながら下落(※テクニカルの項「先物取引」に後述)しており、悲観ムード満載だった。また、21日(木)深夜のFOMCで、パウエル議長の「保有資産の縮小ペースを5月から緩め、9月末に一部資産の縮小を終了させ、毎月150憶ドルと半減させる」のサプライズ発言の1日後に崩れた形であり、この1日遅れの暴落はどうも解せない。
ただ、今週の大一番は、29日(金)の閣僚級の「米中貿易協議」。現在のところ中国側の抵抗が強いという報道が流れているが、ここでライトハイザー氏とムシューシン氏は北京を訪れ、合意の取りまとめに入るという。事前にトランプ大統領は、貿易協議が合意に達しても、かなりの期間、中国に対する関税をそのまま据え置く方向で検討している、ことを明らかにしている。中国が本当に合意を守る気持ちがあるか、確認する意味合いの会談になるということで、今週末が米中貿易協議の山場であることは疑いようがない。
さて今週のストラテジーへと移りたい。
筆者は、週明けの月曜AM10:30~の「上海市場」の動きを確認して、ポジションを考える方針を採る。この時間になってもなお悲観ムードが蔓延しているならば、含み損の少ない銘柄を切って、引けまでにVIX指数(1552)を購入してリスクヘッジに努めたい。こう考えるのも、26日(火)は国内の最終権利付き最終売買日で、配当落ちを埋めるための買い資金が市場に流れ込んでくるから。今年は1246億円規模の買い需要が発生すると予想され、TOPIX先物ではこれを上回る5000億円規模の買い需要が発生する計算である。薄商いの日本株市場において、この買い需要はかなりの大きさである。また事前に、これ目当てでヘッジファンドが空売りを仕掛けていた可能性があり、反発ムードを嫌っての、買い戻し誘発余力があるという見立てである。