アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<書評>『TOB阻止 完全対策マニュアル』(伊藤歩。財界展望新社)

 リーマンショック以後、株安傾向がつづくなか、TOB(株式公開買い付け)をもって株式市場から逃げる上場企業が相次いでいる。その結果、割を食っているのが個人投資家だ。価格も、追い出される時期も、一切交渉の余地がないまま、自分の保有株を奪い取られている。 これが、いま大流行している「上場廃止目的のTOB」であり、「キャッシュアウト」だ。 本書はまず第1章で、健全な上場会社が「キャッシュアウト」という手法で株主を追い出している現実と、キャッシュアウトに走る上場会社の言い分から話をはじめる。 ついで第2章では実際にどんな方法で追い出しているのか、より具体的に解説。素人には難解な“全部取得条項付与を使ったキャッシュアウトの流れ”をわかりやすく解説。05年の会社法成立以前と以後についても触れる。 第3章「サポーターの利益と投資家の不利益」では、キャッシュアウトで証券会社や大弁護士事務所が利益を受ける一方、個人投資家は“自己責任”の論理で損をしている実態が暴かれる。 第4章以後は、追い出しTOBがかかったときの「対策マニュアル」をはじめ、個人投資家が身を守るための実践対策が披瀝される。これは有用だ。 著者はノンバンク、外資系企業などで16年働いた経験がある金融ジャーナリスト。「あとがき」で、執筆に際しての思いを次のように述べている。 「株式投資は自己責任である。だが、利益が出るのか損が出るのかの問題以前に、売却の価格や時期を見ず知らずの他人に勝手に決められてしまう。そんな理不尽なことが、何の事前通告もなく起きることが自己責任だと言い放たれることに、そして、投資家保護機能が全く異なることには頬被りをしたまま、欧米では日常的なこととして投資家は理解・納得しているなどと言われることに、どうしても納得がいかないのである」。 (2011年12月1日発行。税込み1890円)…

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