安倍政権は、昨年10月30日に韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金に対し元徴用工への損害賠償を命じる判決を出したことに対し、「65年の日韓請求権協定2条で、完全かつ最終的に解決しており、判決は国際法に照らしてあり得ない判断」と批判している。
そして、わが国大手マスコミはその政府見解をそのまま報じている。
しかし、「完全かつ最終的に解決」したのは日韓政府間のことで、個人の請求権までは消滅したわけではないと、誰かがいっていた記憶があるのだが、どこの大手マスコミも触れないので聞き間違いではないかと思っていた。
ところが、先週出た『サンデー毎日』(2月3日号)の高村薫の「サンデー時評」で、あたかも韓国の司法が国際法を無視していると言わんばかりだが、こう述べられており、記憶違いでないことがわかった。
「1991年の(わが国)外務省の国会答弁で、当該の協定(65年の日韓請求権協定)については、個人の請求権の消滅は意味しないとされた」。「韓国の司法は、そもそも慰安婦や徴用工のような反人道的不法行為は日韓請求権協定の埒外という立場であり、それに従って新日鉄に対する個人の訴えを認めたに過ぎない」。
また、今週発売の『サンデー毎日』(2月10日号)の『倉重篤郎のニュース最前線』でも、登場した志位和夫共産党委員長は「河野太郎外相が昨年11月14日の衆院外務委員会で『個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません』と明言している」。そして、同じく登場した田中均元外務審議官は「徴用工問題について日本外交のトップが韓国大法院の判決を『暴挙』と激しく批判することで、得られるものは何か。国内の反韓感情を代弁し結果的に両国の反感を煽ることになっても問題を外交的に解決することにはつながらない」と疑問を呈している。
それにしても、いつも中立性を謳い、どっちつかずの曖昧な報道をする大手マスコミだが、ならば、韓国大法院の賠償命令を報じるに当たっては「個人の請求権は消滅していない」の事実も報じなければ中立性を保てないのではないか。
それをしないのは安倍一強の下、これまた忖度の結果なのか!?