昨年から、債務超過に陥っている“危ない上場企業”が債務超過を脱して上場維持できるようにするため、現物出資による第3者割当増資を悪用しているのではないかと思われる事例が目立っている。
そんな事例の一つが、本紙でも取り上げた、今年2月10日に実施した「NESTAGE」(大阪市吹田市)の分。
当時、NESTAGEは債務超過になっていたところ、「クロスビズ」(東京都中央区)なる会社が3つの不動産現物出資で計12億円の第3者割当増資を引き受けてくれたことで、債務超過は一挙に解消した。だが、8月2月、NESTAGEがマザーズ上場廃止になったのはご存じの通り。
いくら現金による引き受けでないとはいえ、本当に12億円もの価値のある物件なら、それなりの収益を生むなどして当分の運転資金を捻出できると思うのだが、鑑定した不動産鑑定事務所が大幅に評価を引き上げていたため、上場廃止まで大して時間稼ぎにならなかったとの評が兜町界隈では専らだ。
たとえば、この現物出資3物件のなかには、郵政問題で槍玉に上がった「かんぽの宿」の北海道層雲峡の物件(冒頭写真)も含まれていた。
NESTAGEの現物出資では、この物件価値は5億1900万円になっていた。だが、クロスビズの前の持ち主(大江戸温泉)が購入した価格は1億7000万円に過ぎなかった。
同じく、クロスビズが増資引き受けに提供した山形県米沢市のホテル(4億5400万円)、岡山県倉敷市のホテル(3億2700万円。こちらはクロスビズは土地は賃借)に関しても価格の水増し疑惑が出ている。
この3物件とも同じ不動産鑑定事務所が鑑定したが、ここが鑑定していた上場企業(当時)の現物出資による増資引き受けの不動産は他にもある。