「ゆうちょ銀行」(川茂雄会長=冒頭写真。東京都千代田区)といえば、本紙では最近、振り込め詐欺会社と誤解を受け口座凍結されたと思われる会社に提訴された件を報じた(下写真は『財界にっぽん』11年1月号記事。4頁)が、またトラブルになっているとの情報が本紙に届いた。
前回はよく調べをせず、顧客を犯罪者とみなしてしまったと思われるが、今回は逆に、犯罪者が、ゆうちょ銀行のこの対応を悪用すれば、簡単に顧客の通帳から預金を引き下ろせるのでは、との懸念があるケースだ。
都内在住の会社社長E氏(60代)は、今年に入って都内の5箇所の郵便局窓口で預金通帳を示して計7回、計49万円×7(回)=343万円を下ろした。
ところが、7月に利用した板橋志村郵便局では引き下ろしを拒否された。理由は、通帳の本人ではないからとのことだった。
確かに、その通帳はE氏のものではなく、岳父のものだった。だが、岳父は今年初め脳梗塞で倒れ、以来、今日まで意識不明のまま入院中。治療費などで相当の持ち出しがいるところ、みずほ銀行とゆうちょ銀行の岳父の預金通帳が見つかった(届出印も)ので、E氏はまず、みずほ銀行の窓口に出向き、所定の用紙に記載、届出印を押し、5万円下ろそうとした。
ところが、窓口で4桁の暗証番号を聞かれた。しかし、前述のように岳父は意識不明のためE氏は暗証番号を知らない。説明するのも煩わしかったので、E氏はその場を黙って立ち去った(別に行員が追いかけて来るようなことはなかった)。
そして次に東京都国分寺市内の郵便局に出向いた。
その際には自分の戸籍謄本、住民票を持参。そして、岳父が意識不明で入院中であることも告げた。すると社員は「50万円以上なら本人確認するが、それ以下なら必要ないから下ろせる」とのことだったので、E氏は所定の用紙に引き出し額などを記載、届出印を押して出したところ、無事49万円を下ろせた。
その後、四谷管内の3つの郵便局、新宿区内の郵便局でも49万円ずつ下ろせた。
なお、この4局には戸籍も住民票も持参せず、ただ所定用紙に記載、届出印を押して出したところ、どこでも運転免許証提示を求められたもののOKだったという。
ところが、繰り返すが、今年7月23日、出向いた板橋志村郵便局では「本人でないと下ろせない」と拒否された。