■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。 ≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫ 先週末の日経平均株価の終値は22,307円と、1週間で-558円もの下落となった。前稿では「現時点での日本株の割安感は際立つが、休暇明けの海外勢がどう動くかで方向感がでる」と記したが、その答えは「下落」であった。しかし8日連続上昇のあとに、9月7日(金)まで6日連続下とはヒドイ動き方だ。もともと弱かったトピックスなどは7日連続下落とさらに弱い。 ただ、関西を直撃した台風21号、北海道での大地震からの全域停電など、これまで絶好調だったインバウンド(訪日外国人旅行者)需要が急減するのではないか? という懸念や、企業ぐるみでとんでもない愚行をやらかしていた「スルガ銀行」、「TATERU」の悪影響など、日本独自の下げ要因もあった。 そしてこの男も、いつもどおり一枚噛んでいる。週末にはトランプ大統領からの口撃が相次ぎ、中国との通商交渉に関して「第四弾として、行いたいと思ってはいないが、私が望めば2670億ドル分を追加実施する準備がある」との発言が市場のムードを厭世的なものに変えた。そして週末の7日「次の通商交渉のターゲットは日本。合意に達しなければ日本はたいへんな事態となる」と貿易赤字の削減を迫る恫喝発言をした。 先週のこの悪~い地合いを受けて筆者が感じたことは、2つである。 1つ目は、これだけ立て続けに悪材料がでたにもかかわらず、1日単位で大暴落となった日はなく、積み重なって週間で-558円安程度だった事実。一部、半導体、設備投資関連株は大崩れとなっているが、日本株の下値はしっかりとしているのでは!? 2つ目は、やはり貿易戦争懸念が収束しなければ、安心して株が買える状況ではない、という思いだ。 その貿易戦争に関しては、レイバー明けから徐々に沈静化してくると予想しているが、現時点では止む気配が感じられない。というのも、ここにきて11月6日の米国中間選挙で、上院・下院ともに民主党が過半数を奪回する可能性が高まってきたもよう。トランプ大統領の直近の支持率に関しても支持が41.9%、不支持が53.9%と、前稿で指摘した直近の最低水準から、大きく動いていない。トランプ大統領の焦燥感は手に取るようにわかる。 さて今週のストラテジーに移りたい。まず今週は日本で、年に4回の重要イベント「メジャーSQ」が金曜日にあるため、先物を駆使した仕掛け的な値動き⇒ 波乱の展開が予想される。たいていは週半ばの火曜、水曜までで態勢は決するので、週明けからは、デイトレ感覚だとしても買い向かうことは避けたほうがよさそうだ。そもそも先週のトランプ発言で「全輸入品に追加関税をかける可能性がある」と恫喝された中国(上海)株の週明けの動きはたいへん気になるところ。AM10:30に上海マーケットが始まるが、AM10:15にはプレオープニングの値動きがわかるため、注意を払いたい。 現在の上海株価指数は2,702元と安値圏で推移しており、2016年1月28日の「人民元切り下げショック」時の安値2,638元は覚えておいて損はない。仮にここまで下落した際は為替水準で、リスクオフの円高となっていないか? を確認しつつ資産に応じた適正なリスクヘッジポジションをとっていきたい。 また為替(ドル円)の推移も極めて重要だ。先週金曜日の寄付きには、75日線である110.77円を一時下抜けたため、筆者も買いポジションを落とし、「日経ダブルインバース」(1357)を購入したが、幸いにも夜間にまた75日線を奪回し111.08円まで戻っている。200日線である109.8円まではかなり距離を残すし、日銀短観をみる限り想定為替レートは107.3円なので現時点では心配していないが、ドル円の110円割れともなれば日経平均株価に大きな影響を及ぼすので、しっかりみておきたい。 もう1つ気になっているのが「プットコールレシオ」。9月7日時点で当指標は「0.63」と久しぶりにこの指標が急上昇している。もちろんメジャーSQ前のプットオプションの仕掛けである可能性は高い。ただ、テクニカルの項で後述するが、裁定買い残は底打ちシグナルの手前水準。現時点では波乱の展開は、来週金曜日に控える「米国SQ」までだと感じている。 今週の戦い方として、まずは米国トランプ大統領による、第3弾となる中国製品2000億ドルへの追加関税の動きがはっきりするまでは、買い向かってはならないだろう。今週は資産の保全を最重点においた投資をオススメしたい。 最後に備忘録を記して締めたい。いずれ、中国が米国に輸出しづらい状況が明白となった時、米国の需要をほかの国がカバーしなければならなくなる。そうなれば生産体制の規模を考えると日本がその最有力候補となるだろう。いまは、そのシナリオに沿って銘柄を選定すべく企業調査を行いたい。 ≪今週の注目イベント≫ 9月10日(月) 中国8月生産者物価指数& 消費者物価指数(10:30) 9月11日(火) 国内8月工作機械受注・速報値(15:00) 9月12日(水) 7-9月期法人企業景気予測調査(8:50)& アップル新型iPhone発表(26:00) 9月13日(木) 国内7月機械受注(8:50)& 米国8月消費者物価CPI指数(21:30)& トルコ中銀政策金利発表(20:00) 9月14日(金) 日本メジャーSQ& 中国8月小売売上高(11:00) &米国8月小売売上高(21:30) & 米9月ミシガン大学消費者態度指数速報値(23:00) ≪今後の注目イベント≫ 9月20日 自民党総裁選 9月20~23日 東京ゲームショー2018 10月中成立? 米国税制改革第2弾を9/10近辺に法案提出 11月中 米中首脳会談(貿易摩擦の決着を狙う) 11月6日 米国中間選挙 2019年10月 国内消費増税 ≪テクニカルポジション≫ 先週末の日経平均株価の終値は22,307円。5日移動平均線は22,556円、25日線は22,494円、75日線は22,453円、200日線は22,413円。一気にすべての移動平均線は下抜けした。かたや先週末のTOPIXは、終値1684ポイントと先週比で-51ポイント。5日移動平均線は1704ポイント、25日線は1714ポイント、75日線は1736ポイント、200日線は1765ポイント。日経平均株価もトピックスもこの1週間でボロボロになった。 7月の日本メジャーSQ値は、22,656円。 ドル建て日経平均株価は、9月8日(土)朝時点で201.1ドルと先週比-4.4ドル。 続いて、CFTC(米商品先物取引委員会)のドル円の建玉を。9月4日現在-51,932枚の売り越し。大きな動きは出ていない。過去最高値は、2007年6月に記録した▲18万8000枚の売り越し。 ここからは現時点での「日経EPS」と「PER」。9月7日時点の日経平均予想EPSは1737円と先週比+5円。日経平均採用銘柄の業績発表が終わった段階で、多少ではあるものの、上方修正が勝って着地した。ただ、1Q段階での結果であること貿易戦争の渦中であることを鑑みるとかなり業績見通しは明るい。 続いてPER。「日経平均」は12.84倍(先週比-0.36)、「TOPIX」は14.37倍(先週比-0.42)、「東証2部」は6.12倍(先週比-0.15)、「ジャスダック」は13.54倍(先週比-0.50)、「マザーズ」は8月末時点の加重平均で118.5倍(※7月124.4倍、6月103.2倍、5月66.7倍、4月62倍、3月63倍、2月79.6倍、1月80倍)。 米国では「NYダウ」が16.76倍(先週比-0.02)、「S&P」は17.84(先々週比-0.14)、「ナスダック」は21.4倍(先々週比-0.57)。ナスダック市場の下げが目立つくらいで、米国市場は高値圏である。 次に東証1部とマザーズ市場の売買代金に移る。9月1週目の東証1部の週間売買代金は、9兆8940億円と、1日当たりの売買代金は1兆9788億円となり、先週比-2219億円の減少となった(※8月5週目2兆2007億円⇒ 1兆8346億円(※今年最低)→ 2兆2981億円→ 2兆3169億円→ 2兆7226億円→ 2兆1334億円→ 2兆3905億円→ 2兆3653億円→ 2兆3281億円→ 2兆2234億円)。 例年、レイバー明けから海外投資家が戻ってくるといわれ、先週後半からは平時となったはずが、売買代金は2兆円割れと冴えない。相場活況の定義は1日あたり2兆5000億円、大活況で3兆円である。 次は、個人投資家の主戦場・マザーズ市場の売買代金。9月1週目の売買代金は4670億円と、1日当たりの売買代金は934億円となり、先週比-96億円の減少となった(※8月5週目1030億円⇒ 903億円→ 928億円→ 828億円→ 815億円→ 825億円→ 793億円→ 980億円→ 970億円→ 1008億円→ 1515億円(メルカリIPO))。現在のマザーズ指数は1009ポイントと先週比-40ポイント。またしても1000ポイントの攻防戦となってしまっている。 次は、海外投資家の投資部門別週間売買動向(日経平均現物&先物・TOPIX・JPX含む)に移る。まず海外投資家の8月5週目は、+5280億円(先物+4927、現物+353)と大きな買い越しとなった(※8月4週目+1274億円⇒ ▲6965億円→ ▲1554億円→ ▲3463億円→ +1558億円→ +6276億円→ +2832億円→ ▲2996億円→ ▲6946億円→ ▲8191億円→ +5324億円→ +2265億円→ ▲5618億円→ ▲1284億円→ +3517億円→ +2270億円→ +1003億円→ +3181億円→ +4172億円→ +5703億円→ +4633億円→ ▲9309億円→ ▲3454億円→ ▲8292億円→ ▲9407億円→ ▲5130億円→ ▲5497億円→ ▲1兆7968億円→ ▲1兆1675億円→ ▲8276億円→ ▲1669億円→ ▲10,045億円→ +6841億円(1月1週目)。 当該期間は、日経平均株価が+263円となり、売買代金はさほど盛り上がらない凪のような状況だったが、海外勢は大きく買い越した。ただ、先週、日経平均株価は一気の、-558円安となっており買い向かった海外勢が、めずらしく丸コゲになっている。年間を通しても数回レベルでしか見られない現象がここで起こった。1月2週目以降、3月最終週までに海外勢は12週連続の売り越しで▲9兆3227億円となっており、先週までで考えても▲7兆8388億円の売り越しである。 続いてマザーズ市場。海外勢の動向はというと、8月5週目は+24億円(先物-12、現物+36)の買い越しだった(※8月4週目+45億円⇒ ▲66億円→ ▲12億円→ ▲83億円→ ▲72億円→ +26億円→ +64億円→ ▲57億円→ ▲15億円→ ▲431億円→ +88億円→ ▲42億円→ ▲35億円→ +12億円→ +26億円→ ▲8億円→ ▲13億円→ ▲70億円→ ▲32億円→ ▲51億円→ ▲86億円→ ▲40億円→ ▲84億円→ ▲5億円→ +3億円→ ▲23億円→ ▲26億円→ ▲39億円→ ▲41億円→ ▲65億円→ +74億円→ ▲90億円→ ▲15億円→ ▲43億円(1月1週目)。 この週は週間で+54ポイントの大幅上昇だった。海外勢の買い越しも納得できるものの、翌週にあたる先週は、マザーズ市場は-40ポイント安だったため違和感が残る。ここでも海外勢が丸焼けになっているからだ。 さて、空売り比率。9月7日時点で45.4%。詳細をひも解くと、価格規制あり(ヘッジファンドなど)が39.5%。価格規制なし(個人投資家や裁定取引)が5.9%。先週は週明けから高水準で高かったので株価は上がりようがなかった。8月13日(月)には48.5%と過去3番目の水準まで上昇。※過去最高は3月23日の50.3%。 次はFEDウォッチ。現時点で9月のFOMCでさらなる利上げをする確率は100%と先週比+0.08%。これで利上げがないと逆に市場は大混乱となる。12月は79.8%と先週比+12%と一気の上昇だ。それだけ先週の米国経済指標(PMI指数&雇用統計)がよかったということだ。マインド指標であるPMI指数などもまるで変調をみせなかったということは、米国企業の経営者なども、貿易戦争に前向きでいるというシグナルである可能性が高い。 さて、次回9月にFOMCで予想される、短期政策金利(FF)誘導目標は2.25%。9月7日現在の「米国2年債金利」は2.7%と、先週比+0.08%。米国 10年債利回りは、2.944%と先週比で+0.09%上昇し、利回りの差はこれで0.244%と、先週よりは多少改善したものの、以前よろしくない状況である(※7月13日につけた利回り差0.251%を越えてきている)。参考までに7年債利回りをみると2.889%。ここから利回り差が接近や、逆転が起こるようなら景気後退のサインとなるため株式投資どころではなくなる。もう完全に危険水域だが、米国経済指標に落ち込む兆しはない。ターミナル(均衡)金利は、現在3.4%程度である。 さて、株式と債権の魅力を比較する指標である「リスクプレミアム」(RP)。S&Pの益回りは5.605%(※PER17.84)。10年国債の利回りは2.944%。これを差し引くと約2.661%と、先週比でマイナスとなり警戒感が高まっている状況。先週は、国債利回りが上がり、株式のPERは少しの下落だ。現状の3%割れはそもそも危険水域だと思われるが、まずはS&Pが最高値をつけた1月26日のRPが2.62%だったことを鑑み、10年物国債が3.05%ラインに達するか、S&Pが爆上げとなった場合は1回アラームを鳴らし、資産の保全を最優先に考えたい。もうS&Pの次の上昇局面では、たいへんマズイ水準となることは認識しておくべき。 次の指標は「プットコールレシオ」。9月7日時点で当指標は「0.63」。久しぶりにこの指標が急上昇している。オプション市場で売る権利(相場の下落に賭ける)÷(相場の上昇に賭ける)といった単純な指標だが、短期的な相場動向をみるうえでは役に立つ。※暴落時は1.15くらいが底打ちのサイン、通常なら1程度で市場は落ち着きを取り戻す。 9月7日時点での日経平均騰落レシオ(25日)は84.99%(※値上がり銘柄数÷値下がり銘柄数で120%以上だと警戒圏、70%で底値圏だといわれる)。売られすぎ局面である。 次はNT倍率(日経平均÷TOPIX)。9月7日は13.24倍と(※9月6日13.29)と依然最高水準をキープしている。2013年以降の同指標は12.12~12.54倍の間に入っていたため、現在日経平均が買われすぎていることは確か。日経平均株価の初動となった9月8日(金)は12.1倍で、ここ3年では、2016年8月15日の12.81倍が天井となっていたが、これを上回っている。いいかげんトピックスにも頑張ってもらわないと、日経平均株価の急落をケアしたくなる。ただ、この指標はあくまでも「裁定解消売り」とセットでとらえるもの。 そして最重要指標として記載をしている「裁定取引高の推移」。裁定買い残の水準は、8月31日に1兆5647億円と、前回報告比で+731億円の増加となった。ただこれ以降は8月29日までにジワジワ減っている。先週も日経平均株価は大幅下落だったため調整が進んでいるはずで、底が近いとみるのが普通だろう。 また裁定売り残に関しては8月31日現在、6766億円と、-499億円減少している。こちらは明確な方向感はみえない。裁定買い残は直近の2018年3月23日に1兆3321億円まで落ち込み、裁定売り残に関しては2018年3月30日、1兆962億円があった。※直近の買い残のピークは1月5日の3兆4266億円。裁定買い残は3.5兆円で警戒警報が鳴り、4兆円をつければピーク確定だといわれた。 次は個人投資家の懐具合である信用取引評価損益率。8月31日、-9.73%となった(※8月24日▲10.98%⇒ ▲12.69%→ ▲11.93%→ ▲10.94%→ ▲11.93%→ ▲11.73%→ ▲12.3%→ ▲13.8%→ ▲11.57%→ ▲11.48%→ ▲9.77%→ ▲9.67%→ ▲9.99%→ ▲9.58%)。この指標が-3%の最高水準であった4年前の2014年1月17日を振り返ると、年初から半年ほどで-15%近い調整が入ったことは忘れてはならない。一般的には-3%以上であれば天井圏(※個人投資家は利確が早く、含み損の処理が遅れるのが一般的なため)で、-20%ラインが大底圏であるといわれる。 最後に個人の信用買い残高で終わりたい。8月31日現在、2兆9328億円と前回報告比で-401億円(※前回比▲389億円⇒ ▲147億円→ +1230億円→ +293億円→ ▲828億円→▲212億円→ ▲1302億円→ ▲1005億円)の減少となった。だいぶ減ってきており、先週の大幅下落でさらに調整が進んでいるものとみたい。 現在のところ3月23日の3兆6759億円がピーク。ここから信用期日がピークとなる9月中旬にかけて海外勢が売らせにかかる展開はじゅうぶんに想定できる。個人投資家はいつでも海外勢の養分になる過去の歴史から、個人が強気だと相場はいつまでも明るくならない。逆に、信用売り残は8月31日現在、8466億円と前回報告比+87億円の増加となった。 【注目銘柄】 今週は資産保全に努める週としたい。今週金曜日に迎える「日本メジャーSQ」は、日経平均株価が安値圏での推移であることからそこまでの波乱は考えていないが、来週金曜日の、米国メジャーSQ」に関しては注意が必要だとも考えている。…