■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週2月16日(金)の終値は21,720円となり、暴落後だというのに先週比で+337円ぽっち…上昇して引けた。翌日の土曜日、日経平均先物を確認すると21,900円と、これで先週比2.42%上昇したことになるが、先週末のNYダウが24,191ドル→ 25,219ドルと、4.25%も上昇したのを目の当たりにすると、恨めしや~といってしまいたくなる。NYダウは週間で1028ドル上昇し、下落幅の6割程度を埋めたことになる。
諸悪の根源は、「円高ドル安」。ドル円は、先週末の9日108.79円→ 105.83円と約3円落ちている。先週は、日銀総裁に黒田日銀総裁を再任する人事案を固めたという援護射撃があったにもかかわらずこのありさまだ。日経平均株価は、1円の円高で200円は安くなるので、600円ものリバウンドが失われた計算である。
このドル安の背景には「米国売り」が挙げられる。市場は、今後の金利上昇に経済が耐えられないとみているのか、米国債権売りが止まっていない。これに伴いドル安も進行し、2017年1月に100以上で推移していたドルインデックスは、先週金曜日にほんのり強くなった感を見せたが、依然89.03。トランプ景気刺激政策による財政赤字の拡大懸念・貿易収支も大赤字となってはドル安傾向なのも致し方ないところか…。加えて、テクニカルの項で取り上げている、投機筋のドル買いポジションも変わらずの高水準で、3月末決算を控えて買戻しが進行する可能性があり、日本の金融機関も3月末決算を前に、米国債を売却して円に換える動きがあるというから困った。びっくりするほど、円安に向かうきっかけが見当たらないのだ。
またFRBは、3月21日のFOMCで金利水準を引き上げるのは確定的。そうなれば日米での金利差拡大の観点から、円安に向かう流れは必然かと思いきや、金利上昇が景気を冷やす→ 株安→ リスクオフで円高という、日本にだけお寒い展開が繰り返される可能性もみえているので、現在の気分はすこぶる悪い。こうなったら逆にさっさとドル円で105円など、いくところまでいって、再浮上のきっかけをつかみたいと思うしだいである。
ただ、ドル円レートに関しては、野村證券の試算では1円の円高で、増益幅は-0.5%程度、大和証券に至っては110円前提だった場合、5円の円高で、1.3%減益要因だと分析しているので、それほど気にする必要もなく、来期2019年度もらくらく企業業績は増収増益となることは間違いないところ。現在の2019年度増益コンセンサスは、前年同期比で+8%はあるのだ。
ここからは、2018年度企業業績の最新情報を。決算が終わりを迎える中、日本経済新聞の調べでは、15日時点で3Qまでの企業決算純利益は、前年同期比35%増となったと報じた。これに呼応し、2月16日(金)時点の日経平均EPSは、1680円と先週比+45円となり、日経平均予想PERは、とうとう12.9倍と、ブレグジットがあった2016年7月と同水準になっている。もう多少の円高程度ならば、どうやっても日本株を売り崩すことはできないだろう。痛みに耐えて、ここまで生き残った個人投資家には、残存者利益が享受されること請け合いだ。
ただ、米国株の動向に世界の株価は左右されがちだということは否めず、現在の米国株の水準を測る投資尺度がないか調べたところ、「金利調整後の予想PER」という考え方が合理的なことに気がついた。「予想PER×10年国債の金利水準」で測る指標だ。
現在のNYダウのPERは(17.3倍)×10年物国債の金利水準は(2.877%)=0.497%となる。1999年のITバブルのころの米国株は、同指標で1.8倍に届くまで上昇していたが、まもなく崩壊。2002年以降の予想PERは、0.7~0.8倍でもみ合った経緯から考えると、この水準までは到達できるだろう。米国株も今後、まだまだ上値を追えることが分かった。
さて、今週のストラテジーに移りたい。今週は、短期的なドル円、そして米国10年債利回りの動きに左右される展開が続くことが想定されるので、慎重に立ち回るべきだろう。日米ともに戻りの上昇局面ではあるが、売買代金の盛り上がりが日を追うごとに欠けてしまっているのは非常に気がかり。ヘッジファンドなどの短期資金の空売りの買戻しで上がった感は強い。ただ、VIX(恐怖)指数は、先週後半には、疑心暗鬼の目安とされる「20」を下回って推移できており、大きな混乱は収まっている。引き続き同指標の推移を見守り売買を行いたい。