■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
2月23日(金)の日経平均株価の終値は21,893円となり、先週比+153円となった。ただ先週の月曜日の寄り付きが21,904円だったことを考えると、先週比でほぼ変わらず。先週の本稿の予言通り、横ばい推移となってしまった。しかし、先週は21日(水)にFOMC議事録が発表され、政策金利のさらなる引き上げを見込んでいることが示されると、米国長期金利が2.952%まで上昇。
一瞬、「これ、やばいやつかな…」と脳裏によぎるも、セントルイス連銀総裁が年4回の利上げに懐疑的な見方を示したことを受けて長期金利の上昇に歯止めがかかり、翌日の日経平均株価は大崩れせず乗り切った。すると週末23日(金)は見違えるように、中小個別株を中心(大型株を除く)に強い動きとなり堅調、この流れを引き継いだか、その夜のNYダウも寄付き前からVIX指数も米国長期金利も低下しはじめ、これを確認した筆者は安心し就寝できたわけだが、起床後、日経平均CFDを確認すると、22,058円となって、売りポジションを保有していない筆者は最高の週末を迎えることができた。
ただ、今週はこれで相場反転確定。割安水準に放置される日経平均株価は一気に水準訂正の大上昇だ! なんてとてもじゃないが、言える雰囲気ではない。
まず気にしなければならないのは、23日(金)トランプ大統領が北朝鮮に対する過去最大の制裁措置を発表したこと。これに北朝鮮がどう反応するか? しかもこの制裁が効果的だと判断できなければ軍事行動を起こすような物言いで発言を締めくくっており、またしても有事懸念がカマ首をもたげる。
そして本命イベントは、27日(火)米国パウエルFRB新議長による、「下院議会証言原稿」の発表。これがPM22:30、講演はPM24:00だということだが、この両時刻は大きな波乱が起こること請け合いだ。というのも、パウエル新議長が「米国の景気がよくなっている」、とでも言おうものなら、たちまち長期金利は急上昇の3%越えがありそう。逆に今後の先行きに配慮した発言など飛び出そうものなら、景気後退懸念となって株式相場は雪崩を起こすだろう。どう発言しても波乱が必至な状況なのだ。ただ、米国債券は、記録的な売りポジションが積み重なっているという報道もあり、これで打ち止めとみたヘッジファンドなどによる債権買い戻しの動きが強まりそうでもある。そうなれば27日中の値幅が大きくなるだけの結果で終わり、以降の株式相場に買いサインが点灯するだろう。
そしてもうひとつの伏兵イベントとなる、「PCEデフレーター」が3月1日 (木)PM22:30に公表される。現在の1月PCEコアデフレーターのコンセンサスは、前月比+0.2%~0.3%。これが上振れし、総合指数となるPCEデフレーターが2%を越えてくるようだと、FRBの目標値であるインフレ率2%に到達と判断し、利上げ気運がマックスとなる。
さらにこれも見逃してはならない注目イベント。2日(金)メルケル首相率いる独キリスト教民主同盟が、ドイツSPD(社会民主党)の政権入りを問う党員投票を行う。これがNOだとCDU(キリスト教民主党同盟)との大連立が否定され、再選挙の可能性がでてくる。欧州の要であるドイツの政治不安は、大きな波乱の芽となるのでたいへん注意したい。結果発表は4日(日)。
仮に、前述したイベントが無事通過した場合は、為替をみてポジションを組み立てるのがよいだろう。ドル円に関しては、日本を含む世界の投資家の「米国債売り」が止まらないと、いつまでも長期金利の上昇圧力がかかり続けるので、円高圧力となる。おそらく3月末決算を控えてのことだと思うので、早ければ3月9日の雇用統計近辺、16日の米国メジャーSQあたりでは、しっかりとした方向感がでてくるものだと考えている。ただ、米国債金利の上昇は、現在が初動である可能性が高いのも事実。もともと米国では、労働者の賃金上昇率が高くなり好況感が増してきたところで、景気刺激政策の減税が行われた。これでは米国の景気過熱は疑いようがなく、FRBも政策金利の引き上げは待ったなしだろう。