神戸地裁で注目すべき民事訴訟が行われている。
関係者によれば、昨年7月、兵庫県神戸市内の不動産会社F社が提訴し原告。(冒頭写真=「神戸新聞」12年8月28日。*一度、このトラブルは地元紙で大きく取り上げられていた)
被告は、鉄鋼(高炉国内3位)などを製造・販売する「神戸製鋼所」(5406。東証1部。兵庫県神戸市)と、鉄鋼製造の過程で出る鉄鋼スラグ製品の販売代行などをする神戸製鋼の子会社「神鋼スラグ製品」(同)。
原告F社は六甲山の麓の神戸市北区の雑種地を購入(約1700坪)。同地を造成し、宅地販売しようと計画。市内の訴外土木会社に宅地造成を頼んだ。
ところが、この訴外M社は原告F社に何の断りもなく、神戸製鋼の鉄鋼スラグを埋設。その量は推定約2739立方メートルにもなるという。
F社は土地表面が異様に黒いことから問い詰めたところM社側は自白。ただし、鉄鋼スラグはいわば鉄クズだから、地盤が強固になりいいとの説明をされたという。
確かに、鉄鋼スラグは「鉄鋼スラグ協会」データによれば廃棄物処分は全体の1%ほどに過ぎず、ほとんどは道路や造成地の地盤強化などリサイクル材として有効利用されているとされる。
しかしながら、この金属のクズは元々環境に悪影響を及ぼす性質があることから、多くの自治体では表層をアスファルトやセメントで塗装する路盤材以外の利用は禁じている。浸透水に混じりアルカリ性を呈することから、近くに水源などがあれば健康被害も起こり得るからだ。
実際、今回問題になっているこの土地でも、土壌汚染対策法が定める安全基準の2倍のヒ素やフッ素、さらに六価クロム、鉛などの特定有害物質が検出されている。このため、神戸市も紆余曲折あったものの近年になりこの土地に土壌汚染が存在することを通知。したがって、土砂の入れ替え作業をする必要があり、そのためには数億円の必要がかかる。
そこで、原告F社は神戸製鋼ら被告に対し、一般不法行為(民法709条)と製造物責任法3条に基き1億円の損害賠償を求めている。