●建物そのものが耐震基準を満たしていても、決して安心はできない
この間の耐震偽造報道では、繰り返し、建物の柱や梁(はり)部分に関する手抜き工事ぶりが指摘されている。柱や、それを補強する梁は、建物を支えるもっとも重要なパーツなのだから当然である。
だが、それ以上に重要なパーツがある。
柱や梁も含めた建物全体を支える基礎ぐいがそれだ。
マンションを例に取れば、その下の地面には何十本という基礎ぐいが打たれ、マンション全体の重みで地盤沈下しないように支えてくれている。
ところが、ここのデータが偽造され、必要な耐震力がなければ、大きな地震が来た場合、その基礎ぐいの何本かが折れたり、沈下し、その上の建物全体が歪んだり、傾き、最悪、横転してしまう可能性がひじょうに高くなるわけだからその深刻さが想像できるというものだ。
この基礎ぐい工事に長年携わっている人物(仮にA氏とする)から、本紙に内部告発があった。
この基礎ぐいのデータを自ら偽造したというのだ。
「基礎ぐいの打ち方にはさまざまな工法がありますが、10階程度までの高さのマンションなどに使用されているのが“埋め込み工法”というものです。すべてのビルの9割程度は、この工法で建っています。
これは大臣認定(旧建設省。現在は国土交通省)を得、初めて使えるのですが、この大臣認定の試験の際、データを偽造してしまったんです」(A氏)
この試験、現場で実際に基礎ぐいを打ち込み、その上に圧力をかけ、どれぐらいの重さまで基礎ぐいが沈下しないかデータが取るというもの(載荷試験)。
「その耐力データが、現場に仮設した小屋のコンピュータ上に出て来るのですが、実は、試験の際にそこにやって来る先生(大学の専門家)に見せるものは、予め申請以上のデータになるようソフトに入れておいたまったく別もの。載荷試験用機械から送られて来るデータの配線は、そのコンピュータには繋がっていないんです」(A氏)