■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週金曜日の日経平均株価の終値は22,819円、先週比+268円となり順調に推移した。…ところが土曜に入ってAM1時過ぎ、ロシアゲート問題でフリン元大統領補佐官がトランプ陣営の関与を示唆した報道がでると日経平均CFDは、一時447円もの大幅暴落となる22,372円まで下落し、ドル円も111.41円まで急落した…が、土曜の朝に日経平均CFDを確認すると22,641円まで戻って引けたようだ。先週は、30日(木)からVIX指数の上昇が目立ち、上院での税制改革法案の進展が芳しくないことを反映しているのか?と感じていたが…ここでロシアゲート問題が出てくるとは。ただ、なんにせよNYダウは、一時、-351ドルまで押した後、税制改革法案の進捗報道がでてということで、-41ドルまで戻って引けたため、それほど神経質な事態にはなるまい、と考えている。
日本市場に関しては、情けないことに、他国の政治問題にもかかわらず、NYダウ以上の下げ幅を記録したが、土曜日には待ちに待った「米国税制改革法案が上院で可決」のニュースが飛び込んできて、今週以降の市場環境は一気に明るいものになるはずだ。
というのも、この税制改革法案は、企業業績に「直接効く」からである。今後、上下両院ですり合わせがなされクリスマス前までの成立を目指すというが、なんせ法人税率が35% → 20%は両院とも同じ合意となっているため、実施時期だけの問題で、わかりやすく企業のEPSは+15%ほど伸びることになる。これでNYダウが現在置かれている、割高な株価指数は正当化されるだろうから、しばらくはNYダウ発の暴落懸念、に怯える必要はがなくなったといえるのだ。
そもそも米国に関しては、11月28日にOECD(経済協力開発機構)が出した世界経済の見通しによると、2017年のGDP予想が+2.2%増で、2018年度の予想が+2.5%で絶好調。また、この数値は税制改革法案を折り込んでおらず、ここから上乗せが可能なので、実行時期に関してはむしろ2019年が望ましいのではないか、とすら思わずにいられない。米国に関しては、複数回の利上げ(金融引き締め)が見込まれる中、向こう3年程度は安定飛行を続けられそうだ。かたや、われらが日本に関しては、2017年GDPは+1.5%の伸びと健闘するが、2018年度は+1.2%と、早くも伸び率の鈍化が予想されるのに加え2019年度は、消費増税が行われるので+1.0%増予測だそうだ。となれば、内需株には辛い相場環境になりそうではあるが、輸出中心の日本企業であるから、日経平均企業の多くは米国の景気拡大の恩恵を受けて成長できるであろう。
さて、ここまで業績報道の記事を大量に取り上げてきたが、マネックス証券がまとめた、2018年度上期・TOPIX企業の当期利益は、前年同期比+23%とすさまじい伸びをみせて着地した。仮にこのままの勢いで2018年度本決算を迎えると、2017年度の本決算が終わった5月末のEPSが1400円だったことから、これに123%を掛け合わせると、EPSは1722円となる。フェアバリューのPER15倍程度で、無理なく日経平均株価は2万5830円に到達する、ということを頭の中にしっかり入れておきたい。現在の日経平均株価は22,641円であり、PERでいえば売られすぎを示す13.15倍である。
そしてもう1つ勇気づけられる指標が「裁定取引残高」の推移。裁定買い残の水準は、11月24日に2兆7897億円と、またもや反転し、先週比+2048億円と増加し始めた。現時点では11月2日時点の2兆8545億円がもっとも裁定買い残が多かったことになるが、このラインに肉薄してきている。これは年末ラリーでの積み上がりに期待できそうで、そうとなれば、海外勢の買い越し基調が鮮明化するのを、先回り買いをして待つのみだと考えている。
懸念材料は、ここまで世界株高を支えてきた半導体銘柄の軟調推移動向。26日に「NAND型フラッシュメモリーの需要サイクルが下降局面入りし、価格は市場予測よりも早く値下がりしそう。半導体の需要サイクルが下降局面に入ったのではないか!」というモルガンスタンレー証券のレポートで始まった今回の調整局面だが、筆者には、ただの利益確定の材料にされているにすぎない、と映る。確かに、NAND型フラッシュメモリーは、中国スマホメーカーで生産調整となっていると伝わってきて、多少気がかりではあるが、全体的に半導体は、自動運転、産業機械、IOT、スマホの高機能化などスーパーサイクルとなっており、これから半導体の需要がさらに盛り上がることは予想できても、ピークアウトして今後減っていく予測は立てようがない。そもそも、シリコンウエハー専業の「SUMCO」(3436)をみていればわかるが、過去の増産設備投資の失敗から、設備の増強には慎重な姿勢を崩しておらず(※同社だけ8月8日設備増強のIRあり)、需給は相変わらずまるであっていない状況。だからシリコンウエハーは、値上げを継続していく状況で同社の利益予想はグングン上がっている。ここから、少なくとも来年いっぱいまでは、半導体が供給過剰になることがあるとは到底思えない。そうこうするうちに2019年を迎えれば5G(次世代通信規格)の特需がやってくるだろう。関連銘柄はあまりに株価の上昇が目につくので、しばらくは盛り上がりずらい状況になるかもしれないが、振り返ればいい押し目となっている可能性が激高だ。